中国の端渓硯は高級硯の代名詞です。偽物も多いため、本物を見極める目利きが必要になります。
端渓硯が硯の王と言われる理由は、硯としての機能性が他のどの硯よりも優れているから。墨が早く下りる、磨る力が衰えない、墨がよく伸びる、墨色が良い、筆先が傷まないなど、秀逸な使用感は他の硯とは明らかに違います。
端渓硯を特徴付けるのは硯石の色です。端渓硯の馬肝色は、端渓の坑から生産される硯に共通する独特な色味です。端渓硯の偽物の多くはよく似た石色の石で作られますが、端渓硯の持つその他の特徴を併せ持っていないため、識者が見れば偽物であることは一目瞭然です。
誰もが憧れる唐硯の最高峰、端渓硯とはどのような硯なのかをここでまとめておきましょう。
・生産地と生産年代
中国広東省産。清時代以前の古端渓は数十万~数百万円、それ以降に生産された新端渓でも5~10万円程度の値段で出回っています。唐時代に採掘が始まり、老坑が掘り進められて水巌良材が多く採掘されるようになりました。
・端渓の三大名坑
端渓の中でもたくさんの名硯を世に送り出してきたことで知られるのが「老坑(水巌)」「坑仔厳」「麻子坑」の端渓三大名坑です。三大名坑から産出される硯は王朝期時代の皇帝や高級官僚などから重用されていました。現在も端渓三大名坑の硯は非常に価値があります。
本物の端渓硯と同じ馬肝色をした練り物は、値段こそ明らかな差がありますが、一見すると違いがわからないかもしれません。しかし、両者の鋒鋩には雲泥の差があります。
墨を最適に磨ることができるように、鋒鋩が細かく強く林立している硯は優れた硯です。端渓硯の鋒鋩は鋭く緻密です。これはきめ細かな端渓硯の石質によるもので、和硯や他の唐硯には真似のできない部分です。
目の前の“端渓硯”が本物か偽物か区別できないときは、可能であれば、磨研石で鋒鋩を立てて、実際に墨を磨るのが一番です。しかし、古硯の高級硯の可能性があれば、安易に墨を磨るのは控えたほうが無難です。そんな場合は専門家に査定を依頼しましょう。
本物の端渓硯には、細かな斑紋の石紋(石疵)、炎のような火捺、鳥の目に似た石眼などの模様が表出します。他の石質の硯には現れないので、模様の有無からも本物と似た石色の偽物かを判断できます。
さらに、端渓硯の偽物には、過剰に見事な彫刻が施されていたり、硯が大型で存在感がある、まったく実用的な形ではない、といった外見上の特徴が見られることもあります。本物の端渓硯の石質では見られない小さな気泡が見つかることも。これは端渓硯と偽った練り物である可能性が高く、材料も石ではありません。
このように、本物の端渓硯にしか見られない特徴や偽物特有の特徴を念頭に置いて、正しい判断を下したいものです。
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