優れた硯とは、道具である以上まずは使いやすくて耐久性があること、さらに墨を磨るのに適度な硬さがあって墨色が良く出ることが求められます。言い換えると、高い機能性や耐久性を備えた実用性の高い硯は優れた硯なのです。そして、実用性の頂点を極め、そこに美しさや硯石の希少性が加わった硯は高級硯と呼ばれることになります。
高級硯には骨董としての資産価値が生じます。普段使いの硯との大きな違いはこの点に尽きます。高級硯であることがわかれば家宝として家に保管するのもよいですが、骨董としての価値に興味がないのであれば、買取に出して得られた資金をおこづかいにしたり、もっと必要な物を購入する資金にすることもできます。
高級硯を見分けるには知識が必要です。高級硯の付加価値を具体的に確認していきましょう。
・生産年代の違い……古硯と新硯
硯には100年以上前に作られた古硯と、生産から100年に満たない比較的新しい新硯があります。古硯には観賞用や調度品として価値が高いものが多くあります。新硯にも名硯はありますが、実用硯が大半です。
中国の清時代末以前に作られた古硯の中には美の表現として製作されたものが存在し、日本に調度品として持ち込まれました。こうした中国の古硯は江戸時代の武家屋敷跡などから出土しています。
日本では、平安時代までは陶硯が、室町時代の終わりから石硯が作られるようになりました。
高級硯であるかどうかの判断基準は生産年代によるばかりではなく、生産地も硯の価値を左右します。
・唐硯と和硯
硯は大きく分けて中国産の唐硯と日本産の和硯に分類されます。
唐硯には5大名硯と呼ばれる高級硯があります。端渓硯、澄泥硯、紅糸硯、松花江緑石硯、歙州硯と呼ばれており、古硯は日本に調度品として渡ってきました。唐硯の原型は前漢時代に使用されていた平板の磨石にさかのぼります。その後、さまざまな産地や形の硯が登場し、清時代に老抗が掘り進められてたくさんの優れた唐硯が生産されました。
和硯の大半は実用硯ですが、雄勝硯(宮城県)と赤間硯(山口県)は国の伝統工芸品に指定されている名硯です。
高級な硯は硯箱に収められています。多くの場合、硯箱は桐や花梨で作られています。硯箱自体にも価値があるため、硯と一緒に保管することが望まれます。
観賞用の高級硯では、硯石の表面に石疵(石紋)・青花・火捺・翡翠・石眼など、さまざまな種類の斑紋が見られます。硯の質に影響はありませんが、斑紋のある硯は価値が高いとされています。
硯石にあるキズは石瑕と称され、ただの傷とは区別されます。良材の硯ほど石瑕が表出するため、高級硯には石瑕がある場合も多いです。キズが石瑕か本物の傷か判断できないときは、念のため古硯の手入れは専門家に依頼するほうがよいでしょう。
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