墨をするのに欠かせない硯は、すった墨のツヤや濃さを左右します。硬くツルツルしている石製の硯は濃い墨をつくり出せず、粒子が粗い石でできた硯はツヤがない墨をすり出します。程よい硬さを持ち、粗すぎない粒子を持った石が硯には適しているのです。
硯は日本製と中国製のものが知られており、それぞれ「和硯(わけん)」と「唐硯(とうけん)」とよばれています。その違いは材質である石の違い。産地や石質によってそれぞれ特徴があるのでご紹介しましょう。
・赤間石:山口県宇部市が産地。比較的硬い石質をしており、硯に加工すると石眼や美しい紋様が出ます。粘り気のある緻密な石なので、細工がしやすく硯石として優れた石です。赤味を帯びた紫色や緑色を帯びたものもあります。
・雨畑石:山梨県早川町が産地。粒子が細かく緻密な石質です。また、水分の吸収が少ないので、硯に最適な石質といわれています。
・龍渓石:長野県を流れる天竜川で産出されます。赤褐色の美しい錆色が特徴で、硯になると粒子の細かいツヤのある墨をすることができます。
そのほかにも、高知県西部が産地の蒼龍石や宮城県石巻市が産地の玄昌石などが有名です。
・端渓石:中国広東省が産地。淡紫色をはじめ青、黒、緑、白など十数種類の色があり、石紋や魚脳などの美しい模様が出ます。細粒緻密で滑らかな石質をしており、この石でできた硯は最高級品として珍重されます。
・歙州石:中国安徽省が産地。青黒、青、黄、緑などの色があり、比較的硬い石質で適度な鋒鋩がすった墨を美しい色にします。宋の時代以降は流通量が激減しており、この石でできた硯は高値で取引されます。
・とう河緑石:中国甘粛省が産地といわれています。硬くきめ細やかな石質で、水が流れた後のような石紋が美しい石です。高級ランクの石は深緑色をしており、硯にすると真っ黒な墨とのコントラストが見事にマッチします。
「澄泥硯」は、端渓硯・歙州硯・とう河緑石硯とともに「四大名硯」といわれている硯です。この澄泥硯は、切り出した石からではなく泥を固めてつくったた硯だといわれています。昔から澄泥硯の製造方法は秘密とされて、一時期は製造ができない時期もありました。研究を重ねてはいますが、製品の成功例は二割もないようです。
そして、数が少ないことからあまり知られていませんが、渭原硯や鐘城硯、大同江硯、海州硯といった硯は、朝鮮を産地としている石からつくられた硯です。持っていたら丁寧に扱ってください。
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