墨をするための硯は、中国から日本へ伝わったといわれています。10世紀ごろから、陶製に代わって石製硯が流行し、文房具としてだけでなく美術品の側面を持つようになりました。自然の石が持つ力強さに職人の技が加わると、美術館に飾られるような逸品になるのです。
硯は、使われる石の産地や硯の形などによって、いろいろな種類に分けられます。そして、そこに施される彫刻にもさまざまなデザインがあります。素人には区別がつきにくいのですが、高級品とよばれるものは心を掴む何かを感じさせるでしょう。硯の世界に興味を持ってみませんか?
・和硯:日本産の石を使った硯。赤褐色が美しい山口県産の赤間石や、東京駅の屋根材にも使用されている宮城県産の玄昌石、なめらかな石質の山梨県産の雨畑石を使った硯が有名です。
・唐硯:中国産の石を使った硯。中国には多くの石抗があり、その産地によって石質が違います。最高級といわれる「端渓石」を使った硯は、石紋が美しく色も十数種類あり、墨をするのにも適した石質を持っています。
和硯や唐硯など数が多い硯の中で、最も価値があるといわれているのが、この端渓石でつくられた「端渓硯」です。
硯の形は、石そのものの形をできるだけ生かした「天成硯」と、加工された「彫成硯」に分けられます。彫成硯は、長方形のものが一般的ですが、そのほかにもさまざまな形があります。
・六稜硯:六角形の硯。中国では六は縁起の良い数字です。
・八稜硯:八角形の硯。八も縁起の良い数字です。
・硯板:窪みのない板状の硯
・太史硯:硯の裏に手を挿し入れられるよう、くり抜かれている硯
・風字硯:鳳池硯ともよばれる硯。Uの字を逆さまにした形で、縁が「風」構えに似ていることから、こうよばれています。
・円硯:円形の硯。楕円やまん丸のものがあり、「円(縁)がつながる」といって縁起が良いとされています。
・蘭亭硯:蘭亭曲水(らんていきょくすい)の宴の様子が彫刻されている硯。
・蓬莱硯:中国に伝わる伝説の山「蓬莱山」は、不老不死の仙人が住んでいるといわれています。昔から不老不死に憧れていた人々は、蓬莱山が描かれているものを傍に置いていたようです。
・蝉様硯:硯全体がセミの形をしている硯。中国では甦りと復活のシンボルとして、装飾に多く使われています。
・竹節硯:竹の節を模した硯。すくすくと真っ直ぐ成長し折れにくいことから、苦境を跳ね返る生命力を意味します。
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