人が健康でいるために体をメンテナンスするように、刀剣も美しさを保つためには手入れが必要です。
刀剣の美しさにとって一番の敵は何か?それは刀身の錆です。
一~二か月に一度、定期的に手入れをすることで刀剣は研ぎあがった状態を保ち続けることができます。しかし、これを怠ると刀身が錆びてしまいます。錆びてしまった刀剣は研がないと元の状態には戻せません。
包丁のように自分で研ぐことはできないので、錆びた場合はプロの研ぎ師に依頼します。
刀剣の研ぎ料金は、一寸あたり4,000円〜8,000円です。
打刀なら、大体二尺三寸の長さなので、23寸。一寸5,000円としても研磨料金が11万5,000にもなってしまいます。
日頃の手入れがいかに大切かがわかりますよね。大事な刀剣への最大の愛情表現でもあります!しっかり手入れをしてあげましょう。
最近は簡単に手入れの道具セットを購入できますが、自己流で行うことは勿論NGです。難しい作業ではありませんが、繊細な作業なので正しい知識を得てから行いましょう。
【必要な手入れ道具】
・目釘抜き…目釘を抜くための道具。縁起がいいことから打ち出の小槌型が使われることが多い。
・油(丁子油)…刀身に塗る油。
・打粉…刀身につける粉。古い油を吸収するだけでなく、表面を美しく仕上げるために用いられる。
・拭い紙…古い油や打粉を拭きとる。
1.刀身の部材をはずす
刀を寝かせ目釘を抜き、柄の部分を持ち静かに鞘を払います。
刀を斜めに立てて持ち、刀を持つ手首をトントンと優しく叩くと、茎(※1)がでてきます。その部分を掴み、柄と鎺(※2)を外します。
2.古い油をふき取る
茎の部分を持ち拭い紙を使って、刃のついていない棟方から丁寧に古くなった油をふき取っていきます。
3.油を完全に取る
打粉を使い刀身を軽くポンポンし、新しい拭い紙でその粉をふき取ります。
打粉には砥石の粉という油を吸収する粉が含まれているので、刀身につけて紙で拭くことを二~三回繰り返すことで、完全に古い油を取ることができます。
4.刀を鑑賞
手入れ中は鑑賞のいい機会です。姿・地鉄(じがね)・波紋など、刀剣のすばらしさを堪能しましょう。
その時に刀身を素手で触れてしまうと手入れの意味がなくなってしまいます。必ず袱紗をもち、刃の反対側の棟に添えるようにしましょう。
5.刀身に新しい油を塗る
錆びを防ぐために脱脂綿で新しい油を塗ります。使用するのは植物性の丁子油です。
6.鞘に納める
油を塗り終えたら、まずは鎺と柄を装着させます。
刀身を鞘に納め、目釘を打ち直せば手入れの完了です。
※1 茎(なかご)
茎は柄の部分に入っている刀身部分のことです。
この部分の手入れも、手順の中で行います。乾いた綿布でしっかり拭き、ごく薄くですが油を塗ります。
※2 鎺(はばき)
鎺は刀身の手元部分にはめる金具のことです。
この部分の手入れも、手順の中で行います。意外と手入れを忘れられるので、気を付けましょう。しっかり汚れを落とし、刀身と同じようにうっすら油を塗りましょう。
手入れ中は以下の点を注意しましょう。
・刀身部分を素手で触らない
手から出る油が錆びの原因になるので、刀身に触れる時は袱紗などを添えるようにしましょう。
・抜き差しの時は必ず刃を上に抜ける
鞘を傷つけてしまうほか、思わぬ時に鞘が抜けるとケガをする可能性があるからです。
・人に刃を向けない
手入れ中、近くに人がいる場合は刃を誰もいない方に向けるようにしましょう。
また、誰かに刀剣を渡すときは刃を自分に向けて渡すのがマナーです。
・油のつけすぎに注意
塗りすぎは防錆の役割を果たしません。さらに鞘に納めた状態で固まり抜けなくなるという最悪の状況を招く原因になります。
・打粉のかけすぎに注意
打粉のつけすぎは刀身をかえって傷つける原因となります。何事もやりすぎには気を付けましょう。
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